Jリーガーのユース選手へのアドバイス

メンタルトレーニング相談に寄せられたケースをご紹介いたします。

保護者の方からサッカーのクラブチームに所属するお子さんの試合中のメンタルに関する相談がありました。保護者とお子さんの同意のもと、実際のメンタルトレーニング相談ではお子さん(以下、「選手」という。)とお話をさせて頂きました。詳細は、以下の通りです。

チームは、地方自治体のリーグ(育成年代)に所属しており、公式戦も頻度高く入っています。
選手の現状と致しましては、ほぼすべての試合に出場しています。与えられている環境、自分に求められていることに責任を持ってピッチに立つことによる大きなプレッシャーや極度の緊張から、公式戦の始まった頃から緊張に由来する体調不良が多くなってきていると感じています。選手自身もこの状況を辛いと感じており、自分で克服したいと話しています。

選手は、元々前の方を担う選手でしたが、コーチからセンターバック(以下、「CB」という。)をチームのためにやってくれないかと懇願され、本意ではないものの、CBを引き受けました。

CBとしても公式戦出場を続けていますが、試合中に緊張から体調の異変やパフォーマンスの低下を感じることもあるとのことでした。また、CBは味方に声掛けをして守備をコントロールする必要があるが、声掛けがうまくできないとの感想もありました。

そこで、メンタルトレーニング相談では、次のようなお話をしました。

試合中の緊張などに対処するため、すでに選手が行っている深呼吸をすることや、SBMTCOの提案する視線を遠くに一度置くことも有効な手段だと伝えました。ただし、これは痛み止めのような一時的な対処法だとSBMTCOは考えているので、やはり根本的な課題等を解決する必要が選手の場合にもあるとアドバイスしました。

すなわち、選手は本意ではないCBというポジションを担うために気持ちや考え方の整理を行い、自分の気持ち等に折り合いをつけることが必要だと思うと伝えました。本意ではないポジションを担うことやCBの責任感の重大さを感じていることが試合中の緊張などにつながっているとSBMTCOは分析したのです。

後日、Jリーガーとのメンタルトレーニングの機会があったので、この選手のケースに対するアドバイスをJリーガーに求めてみましたので、以下にその要約を掲載します。なお、このアドバイスは選手の保護者の方に後日お知らせしました。

【Jリーガーのアドバイス(要約)】
・別のポジションをやることでそのポジションの選手の気持ちがわかる。別のポジションを経験すると、自分がいつものポジションに戻った時に、別のポジションの選手は自分のことをこういう風に思っているのかな等と思えたりする。あとは意外にそこのポジションの面白さに気づいたりとかもあるので、それぞれのポジションでの楽しみ方っていうのもあります。
・前の方のポジションからCBとなると責任感っていうのはかなり重くなると思う。前で今まで自分勝手にドリブルとかしてボールを奪われて、後ろの選手にカットしてもらったこととかあったと思うんですけど、まあ、今度はそれが逆になる訳で、次に自分が前の方に戻ったときに、やはり自分勝手に行っていいのかとか、チームを後ろから見てこの時にはどうするか等がちょっとでも別の視点としてわかれば、プレイの幅が広がることになります。
・今の時代にこのポジションしかできませんっていうのは、そこはそこで監督としてはなんか使いづらいって言うか、世界のサッカーでは結構いろんな国で言われているので、ここしかできませんっていう選手だったら本当にスペシャリストになるしかないというところがある。十何人しかメンバーに入れない中で、一つしかポジションができない人と一応いくつかのポジションができる人とどっちをメンバーに入れますかっていうところだと思います。
・CBの責任はかなり重いです。最後から二番目の砦ですから。一番全体が見えるので守備をするときにやっぱり大事になってくるのでしょう。
・守備の方法は味方への声掛けだけが全てではないと思います。CBが自分のところでボールを止めちゃえばいいですし、カバーリングを磨くとか、そういうところの基本には予測が必要なので、自分を磨いていろいろ見分けられるようになればいいと思います。
・それら(上段のこと)をやっていくうちに、たぶん責任感というよりも本来の目的、役割であること、ボールを奪うにはどうしたらいいかって考えていくうちに、多分その声掛けも、じゃあこういうときにここに声を出せば、自分がちょっと楽になるという風に考えていくと、多分自ずと責任感からといったことだけでなく、声を出した方が自分の思い通りに、一番自分の思い通りに味方を動かせるポジションなので、自分で味方を動かしながら誘導して、ボールを奪う楽しさを感じたりとかもあると思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。何かしらの参考等となれば、幸いです。